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名古屋キリスト教社会館保育部・実践集
1985年8月8日 発行
名古屋キリスト教社会館・保育部
 今年 還暦を迎えた.振り返ってみると,何もしないままこの年になってしまった.自分の周りには物だけが溜まっている.いくらかでも整理して自分の生きてきた道を単純に振り返ってみたいものだと思い付いた.(2008.3.6 追記)
 少しずつ残すものと捨てるものを区別し,多くを捨てていきたいと思っている.そんな中で,1985年名古屋キリスト教社会館保育部発行の「えがおがきこえる」が目に留まった.表紙の写真の子ども達もいっしょに遊んだ子達だし,実践集に載っている先生たちも皆知り合いだ.
 実践集の論文はどれもすばらしい記録であるが,私が保育を考える時にいつも思い出す論文がある. ここに引用させてもらう.
  今,自然はどんどん破壊され,自然とかかわってあそぶ機会がほとんどなくなり,子どもたちが,砂,ドロンコ,水にかかわれるのは,保育園という限られた場になつてきています.このような状況だからこそ,あそぶことのおもしろさを知り,友だちとあそびを広げ,積極的に生活やあそびを創り出せるようになってほしいと保母は願っています.
 
   砂あそびおもしろくないな
 
 入園進級の頃から夏にかけ,設定保育だけでなく,自由あそびの中でも(朝の登園後・給食後など)砂,水,ドロと毎日のように接しています.しかし,どの子もが砂,ドロに対して,さいしょから抵抗なく遊べるのではなく,どうあそんだら良いのか知らない子もいて,遊びこむまでになるには,長い時間がかかりました.新入児のA君やB君は,他の子が砂場でプリンを作り,容器の出し入れに熱中しているのを,砂場のふちで立って見ているだけです.砂が手についてもイヤで,保母が誘って砂を手にもたせるとパッとひっこめたり,イヤな顔で砂をはらったりします.ドロンコが手につこうものなら,感触が気持ち悪く泣けてしまいます.砂,ドロという自分の手で変化させることのできる素材で子ども自身があそべるようになってほしいと思いました.
 
   じぶんでプリンつくったよ!
 
 砂あそびが好きになれない子も数人いましたが,進級児を中心にしながらとりくんでいきました.4月初め頃は,ひとりひとりが思い思いにプリンを作ります.「コップかして!」とオモチャを借りるところからはじまり,「どうやってつくるの?」と保母や友だちが作ったプリンを見て,"自分もつくりたい"気持ちがふくらんできます.何度もコップの中に砂をつめ,コップをひっくり返し,プリン作りをしますが,砂のつめ方,ひっくり返し方で,きれいなプリンに変わってきます.砂がいやだったA君やB君にもプリンの作り方を伝えました.保母が一緒にやりながら,"こんなのも出来るよ"と見せながら,A君やB君が自分の手で作れるように,援助したり,励ましを繰り返してきました.やり方を知ったA君やB君は,自分から砂に関わっていくようになりました. おもしろさが解かり,砂への抵抗も同時になくなってきました.A君B君は,プリンが出来るとうれしくて「せんせープリンできたよ! みて!」と保母の袖口をひっぱり自分の作ったプリンを自信満々,得意げに見せます.何度も失敗を重ねながら,もう一度作り直している子どもの表情は真剣そのものです.自分の手で,作ったプリンはとても大事で,ピョンピョン両足で飛びながらうれしさを表現しています."おいしそう!"と保母だけでなく他の子も寄ってきては話しかけ,食べる真似をし「ムシャムシャ」と,うそんこに食べます.プリンだけでなく,桶でタンタン(誕生日)のケーキを作り,"イチゴもってきた!,ロウソクあるよ"とどこからか拾って来た小石や棒切れ,花びらをケーキに飾り「タンタンタンタンたんじょうび,○チャンの○ちゃんのたんじょうびおめでとう!」とケーキを囲んで誕生会が始まります.
 
     砂遊び だあいすき
 
 砂やドロンコの嫌いだったA君,B君も自分で作るおもしろさを知り,砂,ドロの抵抗もなくなり,あそべるようになってきました.そのことが生活や他のあそびにもいい影響をもたらし,"自分で!"というつもりが出てきました.
 子どもたちは,砂だけでなく,バケツやコッブ゜,ジョロなどに水を汲んでは砂場に運んであそんでいます.いくつもの容器に水を入れ,"ジュースだよどうぞ"と保母に飲ませに来ます.砂あそび,水あそびを通し,お皿,コップを用い,砂,石,葉,木等をうどん,カレーライス,ジュース,ケーキ,アイスクリームなどにみたてていき,保母や友だちとの関りの中で次次にあそびを広げていきます.身体にドロがついても,顔に水がかかっても,少々のことでは泣かなくなりました.
 "いらっしゃいプリンやさんですよ"各々が自分の思いでブリンやアイスクリームを作り,保母に見せ,「すごいね,じょうずね」と評価を受け喜ぶ関係から,保母が中心になりながら,2〜3人の小さな集団で自分の作ったブリンやケーキを友だちにあげて簡単なごっこ遊びに発展していきます.大きな箱をひっくり返してその上でブリンをいっぱい並べて作り,「いらっしゃい,いらっしゃいプリンやさんですよ」「ください」と,お母さんと行く買い物の経験を思い出し,お店やさんが始まります.しかし,「これください」と言って持っていこうとすると「いかん! Eちゃんのだわ,こわしたらいかん!」とすごい剣幕で怒ります.「このプリン食べたいなあ.ちょうだい」とお店やさんではなく,いつもの会話だと「いいよ!」と納得してプリンを食べさせてくれます.店やさんになる子,プリンを買う子のあそびから,作ったものを媒介にして友だちとのあそびを膨らませていきます.
 
     オダンゴできた!
 
 進級児のD君は,身体を使ってあそぶことが苦手です.朝のつどいの体操やリズムあそびなど,身体で表現することがいやで,保母が何度も誘うと,しかたなく少し身体を動かす程度です.全体的に体力がなくやせ気味で疲れやすい子です.また話をすることに自信がなく,自分から大声で友だちにかかわつたりすることはあまりありません.しかし,砂あそび,ブロック,積み木など手先のとりくみでは集中し,あそびこめます.そんなD君がある日砂場の片すみで座りこも,もくもくと何か作っているのです.保母は驚き「何作っているの?」と思わず聞くと「オダンゴつくった」と小さな声だけど自信のある返事が返ってきました.同じ砂場で遊んでいた3才児・4才児はカチカチダンゴを作ると,ほし組の保母や子どもに見せに来たり「あげる」と言ってくれたりします.きっと,こんなオダンゴ自分も作りたいと思って,もくもくと作ったのだと思います.D君のオダンゴを見て,保母だけでなく子どもたちも驚きました.
つづく NEXT
ボクがつくったおだんごオイシイヨ
   二歳児保育実践 砂あそびからおだんごづくり
    森岡 明子
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