高橋康雄「ドストエフスキーの天使たち」 
                大和書房
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1971.4 モスクワ アルバート広場 
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1971年,五木寛之の「さらばモスクワ愚連隊」を読んで,このイメージでモスクワを訪れた. ホテルウクライナから地下鉄に乗ってアルバート広場に出かけた. 
..将来いつかぼくの言ったことに同意してくれるでしょう.いいですか,何かの素晴らしい思い出,とりわけ少年時代の親の家で暮らしていた自分の思い出よりも,このさき人生にとって尊い,力強い,健全な,有益なものは何ひとつないのです.君たちは君たちの教育についていろいろなことを聞かされているでしょう.しかし少年時代から大事に保存した美しい神聖な思い出,それこそおそらく最も素晴らしい教育なのかもしれません.そういう思い出をたくさん持っている人は,一生涯,救われます.そしてたったひとつしか素晴らしい思い出が心のなかに残らないとしても,そのひとつの思い出がいつか僕たちの救いに役立つことでしょう.ことによると僕たちは将来,悪人になるかも知れない,悪い行いの前で踏みとどまることができないかも知れません,また人間の涙をあざ笑って,さっきコーリャが叫んだように「僕は全人類のために苦しみたい」と言う人々に対して,意地悪い嘲笑を浴びせるようになるかも知れません.しかし僕たちがどんな悪人になっても,そんなことがあっては困るけれど,僕たちがどんなふうにイリューシャを葬ったか,どんなふうに数日間あの子を愛したか.そうしてまた今この石のそばでどんなに仲良く一緒に話しあったかを思い出したならば,僕たちのなかのいちばん残酷な,いちばん嘲笑的な人間でも,かりに僕たちがそういう人間になったらの話ですが,今この瞬間,自分がどんなに善良で立派だったかということまで,心の奥底であざ笑う勇気は起こらないでしょう.そればかりか,ひょっとすると,このひとつの思い出が彼を大きな悪から守ってくれ,彼は考え直して「そうだ,僕はあのとき善良だった」と言うかも知れません...
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