あたしひとりが
叱られた.
女のくせって 
しかられた.
 
兄さんばっかし
ほんの子で,
あたしはどっかの
親なし子.
 
ほんのおうちは
どこか知ら
ひとり日暮れの草山で,
夕やけ雲をみてゐれば,
いつか参った寺のなか,
暗い欄間の彩雲に,
笛を吹いてた天人の,
やさしい眉をおもひ出す.
 
きっと,私の母さんも
あんなきれいな雲のうへ,
うすい衣着て舞ひながら,
いま,笛吹いてゐるだろ.
 
夕やけ雲をみてゐれば,
なんだか笛の音がする.
かすかな遠い音がする.
金子みすゞ
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